@phdthesis{oai:mukogawa.repo.nii.ac.jp:02000018, author = {森本, 亮祐 and MORIMOTO, Ryosuke}, month = {Jul}, note = {[研究背景] Orthomyxoviridae科に属するインフルエンザウイルスは、エンベロープを有する一本鎖マイナス鎖 RNA ウイルスである。インフルエンザウイルスは、ウイルスタンパク質の抗原変異により長期的な流行を引き起こし、ウイルスに対する免疫感受性、薬剤感受性に変化をもたらすことで新興および再興感染症を引き起こす。また、種々のタンパク質や遺伝子で構成されており、ウイルスを構成するタンパク質の抗原性の違いによってA型、B型、C型、D型に分類される。主にA型とB型が世界的流行を引き起こし、過去には1918年のスペイン風邪を筆頭に、アジア風邪・香港風邪など数年~数十年単位で世界的流行を引き起こしている。現在、インフルエンザに対する対処法として予防にはワクチン、治療には抗ウイルス薬が汎用されているが、既存の対処法にも副作用や薬剤耐性株の出現など問題点を有する。その問題点を改善しうる代替法として身近な食品が注目されている。食品抽出物の生体への様々な生理機能性が知られており、インフルエンザウイルスを含むRNAウイルスの増殖を阻害する報告がある。さらに、食品に含まれるポリフェノール、フラボノイドなどのファイトケミカル(Phytochemical)は、その増殖阻害の作用点は様々であり、我々の身近にある食品は既存の予防・治療法に代わる新しい抗ウイルス戦略につながると考える。本研究では、新たな抗ウイルス戦略につながる食品としてウリ科食品(カラハリスイカ)を研究テーマとして、インフルエンザウイルスに対する有効性や機能性成分に関して検討する事とした。 [第1章] ウリ科の植物抽出物のスクリーニングにより、強い抗ウイルス活性を有するウリ科食品を見出した。カラハリ砂漠を原産とするCitrullus lanatus var. citroides (Wild watermelon juice, 以下WWMJ) は、MDCK細胞におけるインフルエンザウイルスの増殖を強く阻害することが判明し、他のウリ科抽出物と比較して、IC50値は低濃度(0.11mg/ml)で阻害効果を示した。さらに臨床分離株を含む複数のA型・B型ウイルス株に対して幅広い阻害効果や、オセルタミビル耐性株にも増殖阻害効果を示した。この結果からWWMの阻害機構はオセルタミビルと異なる可能性が示唆された。更に、WWMJが阻害しているウイルス増殖機構は、ウイルスの吸着期(-1-0h)と感染後期(4-8h, 特に6-8h)を阻害している事が示唆された。この結果は、抗インフルエンザ物質がWWMJに複数含まれていることを示唆している。ウイルス吸着期の阻害機構を詳細に検討したBinding inhibition assayや他試験の結果から、37°C条件下における宿主細胞へのウイルス侵入(エンドサイトーシス)を阻害している可能性が示唆された。In vivoではA/PR/8/34 adaptation株感染マウスに、鼻粘膜へのWWMJの投与を行った。その結果、投与群の生存率が有意に延長することが確認された。 [第2章] WWMJに含まれる抗インフルエンザウイルス物質の検討を行うためにメタボローム解析を実施した。WWMJには多くのポリフェノールが、グリコシル化されたフラボノイドやアグリコンフラボノイドが含まれていた事に加え、8-prenylnaringeninおよび8-prenyldaidzein、Daidzein、Genistein、Biochanin、Kaempferol誘導体等も検出された。食品抽出物由来の二次植物代謝物、すなわちDaidzein、Quercetin、Luteolinは強い抗ウイルス効果を示し、IC50 値はそれぞれ 143.6、274.8、8.0 μMであった。これらの化合物の抗ウイルス活性は分子構造内の官能基によって異なっていた。そこで本研究では、食品中に含有している一般的なフラボノイド類に焦点を当て、フラボノイドクラス (フラボン、イソフラボン、フラボノール、フラバノン、およびフラバン-3-オール) の抗インフルエンザウイルス効果を分子構造の観点から議論した。 IC50 値は、それぞれ 4.9 ~ 82.8 μM、143.6 μM、62.9 ~ 477.8 μM、290.4 ~ 881.1 μM、および 22.9 ~ 6717.2 μM であり、抗ウイルス活性が確認された。フラボノイド骨格の修飾群因子(数、位置、種類)は、抗ウイルス活性に大きく関係している可能性が示唆された。さらに、Time-of addition assayにより、阻害機構がフラボノイド骨格構造によって異なることを見出した。興味深いことに、調査したすべてのフラボノイドがウイルス増殖の後期段階を共通して阻害していた。これはフラボノイドがウイルス粒子放出前のウイルス増殖事象を主に阻害していることを示唆している。オセルタミビル耐性株への有効性や細胞毒性(CC50値)の観点からも、フラボン類であるアピゲニンが優れた抗ウイルス物質であると評価した。 [第3章] 天然化合物は、将来の抗ウイルス薬開発の重要な情報源である。WWMJには多くのポリフェノールが含まれており、含有しているフラボノイド類ならびにそのプレニル化化合物の抗インフルエンザ効果に注目した。ナリンゲニンはフラバノンに分類され、柑橘類などの食品に含まれているフラボノイドである。フラバノン化合物およびその誘導体は、幅広い生理活性を有し、抗ウイルス剤としても注目されている。さらにWWMJ から同定された 8-prenylnaringenin (8-PN)を含むプレニル化化合物の生物学的・薬理学的効果が数多く報告されており、抗ウイルス薬開発戦略の重要な情報源になると考えた。そこで本研究では、プレニル化化合物を含むナリンゲニン誘導体の抗ウイルス効果を評価した。ナリンゲニン骨格A環8位・6位における修飾基の立体因子はウイルスの活性に深く関与しており、プレニル基が最も望ましい事を見出した。また、活性評価と同時に蛍光顕微鏡を用いてプレニル化化合物の細胞内取り込み量を評価した。8-PNと6-prenylnaringeninは強力な抗インフルエンザウイルス効果を示すと同時に、細胞内取り込み量が多い事を細胞内蛍光によって明らかにした。また、prenyl基の位置によって細胞内分布や細胞外への流出速度が異なる結果を得た。 本研究では、WWMJの成分やプレニル化化合物を含むフラボノイド類の抗ウイルス活性に重要な分子構造を細胞内取り込み量と共に証明した。 現在の治療薬はウイルスの複数ある増殖過程の一部を阻害するが、WWMJのように宿主細胞へのウイルスのエンドサイトーシスとウイルス感染後期(ウイルス出芽前)を強く阻害する食品は新たな阻害剤として有用であると考える。従って、本研究で得られた知見は新たな創薬ターゲットにつながるアイデアを生み出す可能性がある。}, school = {武庫川女子大学}, title = {Studies on anti-influenza virus action and active ingredients of Citrullus lanatus var. citroides}, year = {2023}, yomi = {モリモト, リョウスケ} }